AOBA-JAPAN BILINGUAL PRESCHOOL

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子どもの育ちを見守る

こんにちは。アオバジャパン・バイリンガルプリスクール下目黒キャンパス校長の磯部 温子です。

突然ですが、皆さんが最近「白黒つけるのが難しいな」と思ったのはいつでしたか?

大人の社会では「グレーゾーン」に直面することも多いのではないでしょうか。

 

子どもの世界ではどうでしょう。

一見、単純に善悪がつくように見える子どもたちの日常も、それぞれの子どもにその子なりの正義がある中で、「絶対こうなんだ」「自分が正しい」だけでは解決しないことばかりです。

 

大人でも解決することが難しい、善悪や常識では答えが出ないこのような経験こそ、幼児期の子どもたちにとっての学びであり、成長する機会なのです。

 

今回は、子どもの成長や学びの機会とそこに関わる大人の役割を、国際バカロレアの考え方をご紹介しながら見ていきたいと思います。

子どもたちが自ら考え、話し合い、ゴールにたどり着けるよう、大人は見守り支援する

私がK5(5歳児)クラスのランチ補助に入ったときのことでした。

AちゃんとBくんはテーブルを挟んで向かい合う形で、何やら真剣な表情で話し合っていました。

一言発するたびに語気が強くなるその子たちの様子を見守りながら耳を傾けていると、どうやら原因は「テーブルの上のパーテーション(感染予防のための透明な仕切板)を誰が片付けるか」ということのようです。しかも、二人とも自分がパーテーションを片付けたくて言い争いになっているのです!

このクラスでは、普段から食事を終えた子から不要になったパーテーションを片付けるという約束が、子どもと先生の間で交わされていたようです。先に食べ終わったAちゃんが、同じテーブルで食事を続けるBくんとの間にあったパーテーションを片付けようとした時に、男の子がそれを止めて、自分が片付けると申し出たようです。

言葉の応酬が続く中、次第に男の子の目に涙が溜まっていき、私もいつ手助けに入るべきか様子を伺っていました。

Aちゃん:私がこの(パーテーションの)前に座っていたんだから私が片付けるんだよ。

Bくん :でも、ぼくはまだ食べてるんだから。最後の人が片付けるんだよ。

Aちゃん:でも、前に人がいないならコレいらないんだよ。片付けていいんだよ。

私    :そうか、二人とも片付けてくれようとしてるのね。

Bくん :じゃあ、Aちゃんはこっち(片方のパーテーション)を片付ければいいでしょ。で、こっち(もう一つのパーテーション)は僕が片付けるから。

Aちゃん:でも、今はもういらないから両方片付けるんだよ。

Bくん :ちがうの。最後の人が片付けるんだよ。

Aちゃん:最後の人じゃなくていいんだよ。

 

その後も少しやり取りが続いた結果、一歩も引かないAちゃんがパーテーションを両方片付け、最後まで自分の権利を主張したBくんは、パーテーションの台の部分を片付ける形で解決となりました。

 

 国際バカロレアが、ミッション・ステートメントに示す「人がもつ違いを違いとして理解し、自分と異なる考えの人々にもそれぞれの正しさがあり得ると認めることのできる人として、積極的に、そして共感する心をもって生涯にわたって学び続ける(IB機構ホームページ)」の姿そのものではないでしょうか。

 この状況で、子ども同士でどのように解決に導くかを見守ります。年度初めは月齢が上の友だちとの関わりの中で、相手に自分の思いや考えを伝えることに苦労する場面が多くあった子どもたちの成長した姿に感動しました。

 同時に、ご家族やクラスの先生がこれまで色々な場面で、「大丈夫かな」「それでいいの!?」とドキドキしながら、それでも子どもたちを信じて見守ってくれたのだと感慨深く感じました。大人の視点ではとてもシンプルで明瞭な答えがある場面においてこそ、支援する大人の関わり方が重要になります。子どもたちが自分で考え、周りの人と話し合ったり、試したりしながら、自分なりの答えを導き出す機会を与えることは、簡単なようで大人の辛抱強さが問われる部分かもしれません。

 国際バカロレアでは、教員は子どもに教えさとす(教諭)というよりは、子どもたちが自ら考え、意見し、挑戦し、答えやゴールにたどり着けるよう支援する「ファシリテーター」の役割を担うと考えられています。子どもたちが周りの環境やコミュニケーションを通して、自ら知識を蓄え、スキルを養う過程先生たちはファシリテートします。スクールでの先生たちの役割はもちろんですが、幼児期のお子様にとって家族との関わりはそれ以上のものです。

一方で、大人の関わり方にも「これだ」という正解はなく、状況に応じて最善の方法があるものだと思います。ご家庭で心の片隅に置いておいてほしいことは、

  • 子どもにとっては「失敗」イコール「成長」
  • 大人が手本になる(こうなってほしい姿を大人が示す)
  • 気持ちにゆとりをもって、子どもとの生活を楽しむ(大人に余裕がない時は無理せずに)

皆さんも、お子様の行動に、思わず先回りして、手出し口出ししてしまいそうになったときに、(大人の方に時間と気持ちの余裕があれば!)グッとこらえて見守ってみてください。

お子様の成長を感じることができるかもしれません。

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Written by

Haruko Isobe