AOBA-JAPAN BILINGUAL PRESCHOOL

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子どもたちの小さな疑問から広がる学びの世界

数年前、早稲田キャンパスのK4クラスで、「私たちは誰なのか」という教科の枠を超えたテーマのもと、「人との関係」について学ぶ探究学習が終わりに近づいていた頃、先生たちは学びの締めくくりとなるイベントの準備を進めていました。テーマは「友情」と「世界の料理」。友だちとのつながりを学んできた子どもたちにとって、パーティーはぴったりのイベントでした。

学校中の子どもたちを招待し、K4の子どもたちがイベントを企画・準備するという計画でした。材料は、のりや絵の具、色画用紙、はさみなど、工作に必要なものがそろっていました。図書館で借りた本で世界の料理について調べ、見た目をまねしておいしそうな「ごっこ料理」を作る予定だったのです。

しかし、ある一冊の絵本が、その計画を大きく変えることになります。谷川俊太郎さんの『ともだち』という絵本でした。

先生たちは、学校で友だちを作ることについて考えるきっかけになるだろうと思っていましたが、絵本の中の「まだ会ったこともない子どもをどうやって助けるの?」という問いかけと、病気や孤独、お腹をすかせた子どもたちの写真やお話は、4歳・5歳の子どもたちの心に深く響きました。

「なんで悲しそうなの?」「どうしてお腹がすいてるの?」「お医者さんに行ける?」「お友だちはいるの?」「一緒に遊べる?」「一緒に給食を食べられる?」

その問いは、大人でも考えさせられる重いものでした。でも、「なにかしたい」と言い出したのは先生ではなく、子どもたちでした。

パーティーの計画はそのままに、でもその意味が変わりました。子どもたちと先生たちは、そのイベントをユニセフの募金活動へと変えたのです。学校のみんなが協力し、寄付をしてくれた方には子どもたちの手作りアートをプレゼント。クラスの子どもたちは卒業の日まで、「人のためにできること」を考え続けていました。そしてその思いは、今もこの学校に根付いています。

たとえば今年の2月、Seibo Japanが運営するNPO「Warm Hearts Coffee」のボランティアの方々が学校に来て、保護者や子どもたち向けに小さなセミナーを開いてくれました。テーマはマラウイという国。そこでは多くの子どもたちが、教育や日々の食事に困難を抱えています。

写真やお話、対話を通して、子どもたちは「コーヒーの生産を通じて、給食支援や教育支援ができる」ということを学びました。保護者と子どもたちは一緒に学び、寄付をすると受け取れるコーヒー袋に貼るためのステッカーを子どもたちが自由にデザインしました。

こうした瞬間は、子どもたちに「共感・創造力・目的意識」をもって世界と関わるチャンスを与えると、どんなことが起こるかを私たちに教えてくれます。たった一つの問いかけが、変化のきっかけになるのです。

これは、Aobaが大切にしている価値観やミッションそのものです。私たちは、教科横断的で全人的な学びを通して、幼児期から「自ら学び、行動する力」を育んでいます。生涯にわたる学びに必要な知識やスキルに加え、自らの意思で行動を起こし、地域や世界に変化をもたらす自信と責任感を育てていきます。

もちろん、「意味のある行動」は一晩で育つものではありません。日々の暮らしの中で、意図的にチャンスをつくっていくことで、少しずつ育まれていくのです。では、保護者として家庭でできることは何でしょうか?

どんなことでも、大きな意味を持ちます。ご家庭でできるシンプルなアクションをご紹介します:

自然の中を一緒に散歩し、「自然を大切にする理由」について話してみましょう。ごみを持ち帰ったり、正しく分別する姿を見せることも立派なモデルになります。東京近郊には、子ども向けの自然体験スポットやハイキングコースもあります。道中では、観察、比較、パターン認識など、理科の基礎となるスキルも自然に育まれます。

リサイクルを一緒にしてみましょう。「なぜ分別するの?」「どうやって出すの?」といった会話を通して、環境への関心や初期の読解力も育ちます。地域のリサイクルガイドは色分けされた視覚的な資料が多く、子どもと一緒に読みやすい内容です。仕分けや量の比較など、算数の土台となる力も身につきます。

髪を切ったり、おもちゃや本が自分にはもう合わなくなったりするような成長の節目を、「誰かのために何かをする」機会としてお祝いするのも素敵なことです。親子で話し合って納得できれば、医療用ウィッグを支援する団体に髪を寄付したり、使わなくなったおもちゃや本を地域のコミュニティセンターに届けたりしてもよいでしょう。ここで大切なのは、子ども自身の同意です。 自分の体や持ち物は自分のものであり、「人のためになること」も自分の気持ちが大切にされる中でこそ意味がある、ということを子どもが学ぶきっかけになります。このような意思決定に子どもを参加させることは、成長・思いやり・責任感のつながりを育てるだけでなく、自分のことを自分で決める力や自分自身を大切にする心も育みます。

家族やご近所の方に向けて、一緒に料理をしてみましょう。「一緒のゴールを決める」「役割を分ける」「材料やスペースを共有する」など、協力する力と共感力を育てる絶好の機会です。年齢が上がってきたら、フードバンクや炊き出しのボランティアに参加することも、責任感や地域とのつながりを深めるきっかけになります。

地域の図書館で読み聞かせに参加してみましょう。わが子のためだけでなく、地域の他の子どもたちの読書にも貢献できます。

子どもが大きくなるのを待つのではなく、「今」から世界に働きかける力を信じてみませんか?子どもたちはすでに、思いやり、リーダーシップ、行動力を持っています。それを育てるだけでいいのです。そしてその過程で、私たち大人もまた、自分自身の中にある「何かを変えたい」という思いを再発見できるかもしれません。子どもと一緒に、少しずつ、世界を変えていきましょう。

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Written by

William Chesser